多発性硬化症の衝撃の真実:同じ病気の裏に潜む、決定的に異なる2つの型

2026年4月1日

多発性硬化症は、自己免疫神経変性が絡み合う疾患だ。免疫がミエリンを攻撃し、伝導の絶縁が壊れることで神経が傷み、やがて脱落していく。

若年成人での非外傷性重度障害の主要因であり、フランスでは約13万人が暮らす。だが、同じ診断でも症状や進行は人により大きく異なる。

ひとつの診断名、二つの軌跡

新しい研究は、MRIと血液の神経フィラメント(sNfL)を組み合わせ、AIで経過を推定した。結果として、進み方が明確に異なる二つの軌跡が浮かび上がった。

一方は早期から炎症が前面に出る「炎症先行型」、もう一方はまず脳萎縮が進み、後からsNfLが上昇する「変性先行型」だ。臨床家が長らく体感してきた差異を、データで形式化したと言える。

  • 炎症先行型:MRIで造影病変が目立ち、再発が頻発しやすい。sNfLも比較的早期に高くなる。
  • 変性先行型:画像で体積減少が先に進み、sNfLの上昇は遅れて現れる。炎症のサインは目立ちにくい。

「この二つの軌跡による層別化は、ある意味で将来を見通す助けになる」と、神経内科医の見解は示唆的だ。患者ごとのリスクと方針を、より現実的に描けるようになる。

予測がもたらす医療の変化

現在の治療は炎症を抑える薬が中心で、再発を減少させる点では有効だ。だが、軸索の損失や再髄鞘化の回復には、なお限界がある。

もし早い段階で軌跡を見極められれば、治療の強度や種類を素早く最適化できる。炎症先行型には高効力薬の早期導入、変性先行型には神経保護や再生を狙う治験参加などが考えられる。

過度な確信は禁物

ただし、sNfLはまだ日常診療に普及しておらず、単回の採血とMRIで未来を断定はできない。数値は年齢や併存症、感染などの要因にも左右される。

個人レベルでの予測精度を高めるには、追跡データの拡充と外部検証が欠かせない。研究は有望だが、臨床応用には慎重さが求められる。

MRIのイメージ

患者と医療者ができること

疾患の個別性を踏まえ、日々のケアにも工夫が必要だ。以下は実践的なポイントである。

  • MRIの撮像計画(同一条件・同一装置)を維持し、脳体積の経時変化を確認する。
  • 施設が対応可能なら、sNfLを定期測定し、他の炎症マーカーと併せて解釈する。
  • 再発だけでなく、歩行・記憶・疲労の微細な変化を日誌で記録する。
  • 禁煙、ビタミンDの適正化、有酸素+レジスタンスの運動を継続する。
  • 理学療法・作業療法・認知リハビリなどの多職種支援を受ける。
  • 不安や抑うつに対して早めに相談し、支援体制を整える。

二つの型をどう活かすか

炎症先行型と変性先行型の違いは、薬剤の選択やタイミングに直結しうる。モニタリングの指標を増やせば、治療の手応えも見えやすい。

たとえば、再発が少なくても萎縮が進む場合は、神経保護の戦略を前倒しにする。逆に、炎症が活発なら、再発抑制に比重を置くべきだ。

未来への展望

AIとバイオマーカーの進展は、層別化をさらに精密にする。MRI、sNfL、網膜OCT、髄液指標、遺伝的素因を統合すれば、診断はより個別化されるだろう。

重要なのは、データと対話を両輪に、患者の価値観に沿った意思決定を行うことだ。二つの軌跡は分断ではなく、より良い伴走への道標である。

山本 翔太
山本 翔太
フィットネスと格闘技を愛するスポーツライター。大学でスポーツ科学を専攻し、国内外のアスリート取材を通じて「挑戦する心」をテーマに記事を執筆。APFでは、トレーニングとメンタルの両面からパフォーマンスを掘り下げています。

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