「私は産婦人科医ですが妊娠中にこのサプリを飲んでいる患者さんを見ると必ず止めてもらいます」

2026年4月27日

妊娠中のからだは、思っている以上に繊細です。ある日、診察室で「美容にいい」と評判のサプリを手にした妊婦さんがいました。私はラベルを一瞬見ただけで、静かにこう伝えました。「きょうからは中止しましょう」。彼女は驚きましたが、理由を話すとすぐに納得してくれました。

「ナチュラル」「オーガニック」と書かれていても、妊娠中は安全とは限りません。大切なのは、成分の中身と用量、そして今の時期に合っているかどうかです。ここでは、私が臨床で本当に止めるサプリと、その背景をお伝えします。

なぜ“美容サプリ”が落とし穴になるのか

広告は「肌に輝きを」「妊婦さんにもやさしい」と語ります。けれど、妊娠中はごく少量の成分でも胎児に影響しうる時期。「ナチュラル=無害」ではありません。私は診療で何度も、「良かれと思って飲んだものが、思わぬリスクを生む」場面を見てきました。

「天然でも、量が過ぎれば薬になるし、にもなる」。これは産婦人科での実感に近い真理です。とりわけ“美容目的”の配合は、妊娠を前提に設計されていないことが多いのです。

私が真っ先に止めるのは「高用量ビタミンA(レチノール)」

私がまず中止をお願いするのは、高用量のビタミンA、つまりレチノールを含むサプリです。これは美容系のマルチや、肝油(cod liver oil)に多い成分。妊娠初期の過剰摂取は、胎児の発達に悪影響を及ぼす可能性が知られています。

安全域の目安として、妊娠中のビタミンA(レチノール等の“前形成”ビタミンA)は、1日あたり約3,000μg RAE(≒10,000IU)を超えないことが推奨されます。問題は、複数の製品を併用したり、1粒の含有量が高いサプリを“美容目的”で飲むと、知らぬ間に上限を超えることがある点です。

ここで誤解してほしくないのは、β-カロテン等の“プロビタミンA”は、体内で必要量だけ変換されるため相対的に安全とされること。危険なのは「レチノール」「レチニルパルミテート」「レチニルアセテート」といった前形成です。「肝油」はビタミンD目的で選ぶ方もいますが、同時に高用量レチノールを含むことがあるため、私は原則避けてもらいます。

「美容のための一粒が、赤ちゃんの未来を揺らすなら、今はやめる」。私が外来でよく口にする言葉です。

ラベルの“読み方”とよくある誤解

サプリのラベルは、IUとμgが混在し、さらに“合計”やブレンド表示で見えづらいことがあります。迷ったら次を確認してください。

  • レチノール(またはレチニル◯◯)が何μg、または何IU含まれているか、1日量での合算はどうか

「マルチだから安心」「食べもの由来だから安全」は誤解です。肝油のように“食品由来”でも、レチノールは高濃度になりえます。逆に、β-カロテンは“由来”よりも型が重要。型を見極めて選ぶことが肝心です。

では、何を選べばいいのか

「すべてのサプリがダメ」というわけではありません。妊娠中に“役立つ”可能性が高いのは、用量設計が妊婦基準になっている製品です。たとえば、妊婦用マルチ(葉酸、鉄、ヨウ素、ビタミンDなどを適量)。DHAも、ビタミンAを含まない魚油なら選択肢になります。

私が患者さんに伝える基本は、「まずは食事をに、必要最小限を補う」。葉酸は妊活期から1日400〜600μg、鉄は検査値を見て個別に、ヨウ素は過不足なく、ビタミンDは不足気味なら補充。そして「レチノール高用量」は避ける。この“少数精鋭”が結局いちばん安全です。

妊婦さんが覚えておきたいチェックポイント

外来では、「飲んでいる全部を持ってきてください」とお願いします。ボトル現物が、最も確かな情報源だからです。また、妊娠に気づく前からの“習慣”が続いているケースも多いので、以下は意識的に見直しましょう。

  • 肝油や高用量レチノール配合の美容マルチ、レチノール入り“スキンサプリ
  • セントジョーンズワート等の相互作用が強いハーブ
  • 甘草(グリチルリチン)やブルー/ブラックコホシュなどの子宮作用が懸念されるもの
  • 過剰ヨウ素や高容量の“メガビタミン”設計
  • 「ブレンド proprietary」表示で用量が不明な製品

最後に伝えたいこと

「やめるのは不安」という気持ちはよくわかります。けれど、妊娠中は“Less is more”。必要のないものは引き算し、必要なものを的確に補うのが最も賢明です。

迷ったら、「これを続けても大丈夫?」と必ず主治医に相談してください。診察室でボトルを一緒に読み解き、あなたと赤ちゃんにとっての最適な一歩を決めましょう。「ナチュラルだから平気」より、「根拠を持って安心」へ。妊婦さんの“安全第一”は、いつだってゆるぎない優先事項です。この記事は一般的な情報です。個別の判断は必ず医療専門家と話し合ってください。

山本 翔太
山本 翔太
フィットネスと格闘技を愛するスポーツライター。大学でスポーツ科学を専攻し、国内外のアスリート取材を通じて「挑戦する心」をテーマに記事を執筆。APFでは、トレーニングとメンタルの両面からパフォーマンスを掘り下げています。

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