戦後の暮らしを彩った古い食器は、いまやブロカントやフリマで人気の「掘り出し物」です。ですが、こうしたヴィンテージ食器の一部には、料理や飲み物に重金属が移行するリスクが潜んでいます。コレクションとしては魅力的でも、日常使いには注意が必要です。
何が問題なのか
多くの古い陶器やファイアンス(軟質陶器)では、色や光沢を出すために釉薬に鉛やカドミウムが用いられていました。とくに低温で焼成する技法では、発色と耐久性を両立させる目的で鉛系のフリットが重用されてきました。こうした重金属は、器の表面が美観を保っていても、食品にわずかずつ溶出する可能性があります。
消費者団体に寄せられる分析依頼は毎年およそ100件に上り、長年の使用で健康影響が懸念されるケースも報告されています。なかでも鉛は神経毒性や造血系への影響が知られており、微量でも継続摂取が問題になります。
どの年代・色が要注意か
専門家が特に警戒を促すのは、20世紀初頭から1950年頃までに製造された食器です。この時代の低温焼成では、鮮やかな発色と量産性のために鉛を含む釉薬が広く使われました。赤〜オレンジ系の強い彩色はカドミウム系顔料が用いられている可能性が高く、使用時の酸性条件で溶出が増えるおそれがあります。
銘柄では、ベルギーの陶器ブランド「Bosch」など、一部のメーカーで当時の実験記録に高濃度の重金属使用が見られたと指摘されています。ただし、すべての古い器が危険というわけではなく、年代・色・釉薬の種類で差があります。
見た目が良くても油断は禁物
「欠け」や「ヒビ」の有無と、重金属の移行は必ずしも相関しません。表面がきれいでも、釉薬の組成次第で食品への溶出が起こり得ます。日常的に使い続けるほど曝露量は蓄積するため、特に子どもや妊娠中の人は慎重な判断が大切です。
「他の金属と違い、鉛は“枯渇”しません。釉薬が残る限り、食品中へ移行し続ける可能性があります」
— ジョエル・スワネ&エリック・スワネ(セラミック技術・食品釉薬の専門家)
家でできるリスク低減
古い器をすべて処分する必要はありませんが、使い方を見直すだけでリスクを大きく抑えられます。とくに酸に弱い釉薬では、料理との接触条件が鍵になります。以下のポイントを参考に、賢く付き合いましょう。
- 日常の主食器としての連用を避け、観賞用や取り分け用に限定する
- トマト、柑橘、酢、ワインなどの酸性食品や長時間の盛り置きを避ける
- スープ、煮汁、漬け込み、熱い飲料など滞留時間が長い用途を控える
- 皮をむいて食べる果物や個包装のお菓子など、直接触れにくい用途にとどめる
- 電子レンジや食洗機、漂白剤は避け、優しく手洗いして表層の劣化を防ぐ
- 不明な器は新しい食器と混用せず、子どもの食事用には使わない
安全性を確かめるには
最も確実なのは、公的機関や認定ラボでの溶出試験による検査です。家庭用の簡易キットは目安にはなるものの、鉛やカドミウムの低濃度検出には限界があります。骨董店やフリマで購入する際は、年代や釉薬についての情報を確認し、用途はディスプレイ中心に割り切るのも賢明です。
近年の食品接触材料に関する規制は厳格化しており、信頼できる現行品の白磁や強化ガラスへ切り替える選択も合理的です。思い入れのある品は、花器や小物トレーなど、食品と直接触れない使い方に転用すると安心です。
ヴィンテージと上手に付き合う
古い食器には、当時の技術や美意識が凝縮された唯一無二の魅力があります。一方で、見えない重金属のリスクは長期的に健康へ影響し得るため、「飾って楽しむ」「用途を限定する」という線引きが大切です。情報に基づいて選択し、時代の美しさと日々の安全をどちらも大切に守りましょう。